12月26日、スマトラ沖地震

https://en.wikipedia.org/wiki/File:2004_Indonesia_Tsunami_Complete.gif

2004年12月26日、私はミャンマーのエヤーワディ川(イラワジ川)の河口のマングローブ林の中にいた。マングローブは熱帯の低湿地の海岸に生育する植物の総称だ。ここで向後元彦さんが植林作業をしていた。私はそのお手伝いというかお邪魔というかで滞在していた。その日は卒業研究に来ていたMEIJI学院大学の学生を案内して、小さな島で3日間ほど滞在していた。

朝ごはんを食べていたら、突然地面が揺れた。揺れは長く続き、かなり大きな地震だということがわかった。私たちのいるところは海面すれすれの場所で、もし津波がやってきたら逃げるところは一つもない。私は急いで皆に作業用の地下足袋を履いて、大きな木に登るように準備させた。たぶん木に登っても気休めに過ぎないとは思ったが、どうしようもない。

◆その島はお坊さんが一人だけ住むほとんど無人島で、電気も水も道路もない。しばらく待機していたが、水位が50センチぐらい上がっただけだった。半日した頃、船頭さんに沖を通る船に情報を聞きに行ってもらった。「韓国で大地震があった」とのこと。韓国の地震がこんなところで揺れるはずはない。彼らだって情報は持っていないだろう。観察はすぐに切り上げて、ボガレーという町に戻った。ここにはテレビもある。周辺の港は津波が襲ったそうで、マレー半島では大きな被害が出ていることを知った。

◆若者を連れているので日本に無事の知らせをしなければならない。しかしボガレーでは電話は通じなかった。首都のヤンゴンに戻ろうとしたが、往路の船は動いていなかった。陸路ジープを雇って一日かけて戻り、日本大使館に連絡に行った。残念なことにお正月でおやすみ。日本人スタッフは誰もいなかった。ホテルからやっと電話が通じて無事を知らせることはできた。ホッとしてテレビを見た。BBCやCNAは繰り返しインドネシアのスマトラ島で大地震が起こり、大変な被害が出ていることを報道している。我々のいた近くでも津波被害が出ているようだ。我々に被害がなかったのは奇跡的だったと感じた。

◆NHKの番組も見ることができた。しかしただひたすら紅白歌合戦の宣伝ばかりだ。マレー半島では日本人も多く犠牲になっているらしい。それでもNHKは紅白歌合戦の方が大事だったようだ。世界的な大事件なのに、どうしてこんなことになるのか。この周辺国の大使館もみなお正月休みだったようだ。情けない。

◆◆◆それから7年たった2011年、日本でも東日本大震災で大変な津波被害が出た。あの時、NHKをはじめ日本全体が「外国のことだからまあいいか」という対応だった。もっと津波の恐ろしさを知らせておいけば、例えば紅白の一部でも休止して、大変な事が起こっていますと報道をしておけば、少しは恐ろしさを感じたろう。

◆自分の身になにか起きない限り、なかなか想像力は働かない。しかしここ数年、異常気象、地震活動など自然現象は本来の動きをしている。(自然というのはダイナミックに動いているのがふつうなのだ)。人ごとと思わず、常に関心を持って、逃げる方法を考えるべきだろう。私がブラリークラブをやっているのは、少しはみなさんに自然(特に地形地質)を感じてもらえるかなと思ってのことである。と我田引水!