広島 巨岩がゴロゴロ

広島の土石龍災害の映像を見るのは心が痛む。遠くにいて何もできない。しかし近くにいる消防、警察、自衛隊もしばしば作業を中断している様子だ。早く何とかしてほしいと思うが、どうにもならないのだろう。 どうしてこんな人い災害になったのか、さまざまなところで原因追究がなされている。決定的なのはとてつもない大雨、1時間に100mmというのは、誰も経験したことがないほどの雨だろう。

そしてこの地の地質。広島県は島々も含んでほとんどの地域が花崗岩でできている。関東東北の人たちは、あまり白砂青松の海岸を見たことは少ないかもしれない。 瀬戸内海の白砂は、真砂 なのだ。花崗岩は石英、長石、黒雲母などの結晶が地下深くで組み合わさったものだ。石に近寄ってみればすぐにわかる。石英というのはガラスのようで固いので、長石が粘土に変化した後に残る。石英がたくさんある白っぽい砂が真砂である。 この真砂の中には砂鉄がけっこうたくさん含まれている。

昔々出雲の方では、真砂に含まれる砂鉄をとるために山を削って水で流して比重の大きな鉄をより分け、たたら(ふいご)で溶かして製鉄をした。そのため出雲地方の山々は崩れ、木も生えなくなった。たたら製鉄の範囲は広がり、広島県の太田川の上流部分にも大きな製鉄所が造られ、山ははげ山になってきた。 花崗岩は地下深くでできた岩石だから、地表付近の圧力の弱い所に出てくると、崩壊が激しくなる。これが風化である。かたい岩石だが、むき出しになると風香は進む。こんど崩れた場所は、たぶんむかし製鉄がおこなわれ、いったんはげ山になって、風化が進んだ。その真砂土に松が生え、風化層は見えなくなっていたのだろう。

厳島 弥山 頂上の巨岩

厳島 弥山 頂上の巨岩

ところで、土石流の跡をみると、とてつもなく大きな岩がいくつも転がっている。今回の土石流ではこの巨大な岩が、あたりかまわずなぎ倒していったのだろう。ふだんチョロチョロとしか流れていない沢の水ではこんな石は流れない。あの大きな岩を流した水流というのはどんなだったのだろう。 ところで上の写真は広島県の厳島神社の奥社がある弥山(みせん)の頂上である。花崗岩はさいころ型にひびが入ることが多い。この岩の根元が水流で流されると、こんな大きな岩でも転がり落ちる。真砂土だけなら、こんなひどい破壊にはならなかったろうが、ダンプカーの何十倍の岩が襲ってきては、避けることはできない。