今は最も小さい県の一つである島根県だが、昔は出雲、石見、隠岐の3国からなるなる国だった。一つの県に3つもの空港があるのその名残である。石見は今は山口県の長門国に接する国で、国府があった浜田市あたりが中心であった。
国府
国府は「こう」と読むことが多い。浜田駅の隣の駅は「下府」と書いて「しもこう」と読む。昔は下国府と書いた名残らしい。下府駅のすぐ近くに伊甘神社がありその周囲に国府があったとされるが発掘調査はなされておらず、確定的ではない。しかし地元では、国府跡の碑を立て、御所池を整備して「国府」あとが確定的である。
総社
伊甘(いかん)神社が総社とされている。国府碑(最近作ったもの)はこの神社の境内にある。式内社で昔はもっと大きな神社であったようだが、今は村の鎮守ほどの規模で、椋の木とイチョウの大木が目立っている。しかし社殿の作りは見ることはできないのだが神社には「印鑰大明神」の文書があるという。印鑰(いんにゃく)とは国府の倉庫の鍵と国司の印を納めた社のことであり、この社があったということは国府の総社であることの証拠になる。境内には清い水の湧きだす御所池がある。国司の館にはこのような池があったというがちょっと小ぶりである。
国分寺
下府から国道9号線を少し北に行くと国分の集落がありそこに金蔵寺がある。地元の人に「国分寺はどこですか?」と聞いてもわからないという。そのはずで金蔵寺の前に石碑と解説板があるだけである。この寺は元の国分寺の跡に立っていることがわかっている。道路を隔てたところに国分寺の瓦を焼いた窯跡があり史跡に指定されている。広大な国分寺と国分尼寺が造営されるにあたって専用の窯が作られたのであろう。
国分尼寺跡
国分寺から500mほど離れた台地の上に尼寺跡がありその一角が発掘整備されている。近年まで寺があったようだが今は石組のみ。石垣の寺あとに佇むとなんとなく気分が落ち着く。寺から小さな谷を隔てた高台に国分寺霹靂(かんたけ)神社がある。国分寺の鎮守だったのだろう。石段途中に珍しい焼き物の狛犬がいた。こんな狛犬は初めて見るものだ。なかなか面白い。
浜田から江津へ、石見二宮多鳩神社、日笠寺
いつもなら浜田駅から歩いただろうが、今回が68か国中67カ国目ということで奥さんが一緒だったのでバスに乗ることになった。奥様は合理的で交通手段があるなら乗れば効率がいいじゃん!という。私は昔の人は歩いて行き来したんだからその感覚を感じたい。しかし奥さんが資金提供者なので言うことを聞くしかない。
殺風景な史跡を見るだけではつまらないので石見神楽の神社を訪ねることにした。石見一宮は遠いので、二宮の多鳩神社を訪ねた。社殿は大社造だが、拝殿の前にさらに神楽殿(弊殿)がある。弊殿で石見神楽が奉納されるそうだ。なかなか素晴らしい神社で奥様は満足。
さらにその後は江津の日笠寺に泊めていただく。住職のYAMASAKIさんとは昔一緒に旅をした仲間である。驚いたことに本堂の中に立派な狛犬(獅子)は鎮座していた。永平寺にある一対の獅子と同じものだという。国府巡りと一緒に、狛犬探しの旅を続けているが寺にこんな立派な狛犬がいるとは知らなかった。最後になってこんな出会いがあるとは!、神様か仏様のご褒美かも!