■3-5 大穴牟遅は黄泉返って大国主神になる。


「殺されました! はい終わり!」
では神話的ではない。実は大穴牟遅命は黄泉の国から帰って来る。すなわち黄泉がえる(蘇る=よみがえる)のである

黄泉の国の入り口「黄泉津比良坂(よもつひらさか)」はJR山陰本線で松江から三つめの揖屋(いや)駅の近くにある。
駅を降りて旧山陰道を安来(やすぎ)方面に歩き、揖屋神社の先の山陰線のガードをくぐった谷戸の奥に入り口の大岩があった。「瞬」(またたき)という北川景子主演の映画の撮影地で、「聖地」となっているそうだ。
坂の上の方から上から大挙して若い女性が下りてきた。なにごとかと尋ねると
「出雲の聖地巡りツアーです!」
とはしゃいでいる。

出雲にはパワースポットが多くある。最近は「聖地」と呼ぶ。黄泉津比良坂のパワーは出雲大社と同じパワーがあるそうだ。しかし映画のポスターにあるような霊に取り付かれたら恐ろしい。雨が降る夜、一人ではとても訪れることなどできない不気味な場所だ。この黄泉津比良坂にはマイナスパワーが充満している感じだ。大急いで下りてきた。
出雲神話では、兄神たちの意に反してヤガミ姫と結婚した大穴牟遅は、いじめ殺されて黄泉津比良坂を下って黄泉の国にいく。古事記では「根の国」となっている。

大穴牟遅はモテモテ男で、根の国にきてすぐにスセリ姫と良い仲になった。
スセリ姫はスサノオと人身御供になりかかったイナダ姫の間にできた娘だった。父親に
「すばらしい男性といっしょになります!」
と報告した。
スサノオ神は大穴牟遅を見て、
「この男は葦原醜男(あしわらしこお)だ」
と言って、スサノオに無理難題をふっかける。
毒虫うじゃうじゃの部屋に入れられたり、焼き殺されそうになったりする。しかしそのたびにスセリ姫が助けてくれる。しかしさらなる試練を与えられる。
ある時、大穴牟遅がスサノオの髪の虱をとってやった。するとスサノオは気持ちよさそうに寝てしまう。そこで髪の毛を宮殿の柱に結び付け動けないようにして、スサノオの財産とスセリ姫を背負って逃げ出した。
スサノオの沼琴が大きな音を奏でたので、スサノオは起き上がった。髪をほどいて追いかけてくるが、二人はすでに黄泉津比良坂から地上に出かかっていた。
スサノオは追うのをやめて、大きな声で
「スセリ姫との結婚を許す!葦原中国はお前が統一しろ!以後は大国主神と名乗れ!そして高天原に届くほどの高い柱の宮殿を建てて住むのだ!」
とはなむけの言葉を贈った。
これで大国主神はスサノオ神が納めていた豊葦原瑞穂の国の跡継ぎになった。めでたし、めでたし。

 

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