■4-3 日向三代目のトヨタマ姫はワニだった!

  山幸彦は赤鯛ののどに引っかかっていた「釣り針」をもって竜宮城から戻ってきて、兄の海幸彦に返した。しかし大成功した弟に対して不満を持った海幸彦は山幸彦を攻めてきた。山幸彦は綿津見神のアドバイス通り塩満玉を出して兄を溺れさせた。降伏した海幸彦を配下にして、山幸彦は海も支配することになった。

山幸彦の海辺に宮殿を作った。その宮殿に山幸彦の子を身ごもったトヨタマ姫がやってきた。山幸彦のもとで子供を産む計画だった。まさか追っ掛けてくるとは思っていなかった山幸彦はおおいそぎで産屋を建てようとした。しかし屋根を鵜の羽で葺く前に子が生まれてしまった。この子が鵜葺屋葺不合(ウガヤフキアエズアエズ)命である。「産屋の屋根を葺く前に生まれちゃった子」といういい加減な名前が付けられた。

青島神社から日南海岸を都井岬の方に進んだ断崖海岸に鵜戸(うど)神社がある。海に向かった断崖絶壁に開いた洞窟の中に朱塗りの立派な神殿がある。トヨタマ姫(豊玉姫)がお産のために海の宮殿から屋てきた場所なのだろうか。

トヨタマ姫は山幸彦に言う。
「子を産む私の姿を見ないで!」
山幸彦は「見るな」と言われたらよけい見たくなる性格だった。当然覗いてみた。トヨタマ姫はワニの姿で這いまわっていた。
「見るなと言ったのに見たワニー!」
姿を見られたトヨタマ姫さんは恥じて、子どもを置いたまま海の宮殿に帰った。

鵜戸神宮の産屋の洞窟の床は、天井から滴り落ちる水で濡れ、磨かれている。薄暗い洞窟内を見ると、ワニの姿で床を這いまわりながらお産をしている姿を思い浮かべ、不気味になる。しかしワニは爬虫類だから卵を産むはずだ。でもまあ目くじらを立てるほどの事でもない。因幡の白兎の話にも出てきた「ワニ」、たぶん海洋民族の和爾氏のことなのであろう。

水の滴る産屋でワニがはい回りながら子を産む姿を想像するとかなり恐ろしいので早々に引きあげた。しかしこの強烈ワニパワーにひかれて、大勢の若い人たちがやって来ていた。鵜戸神社は日本古来の神社と違ってなかなかユニークな神社である。ここで産まれたウガヤフキアエズアエズ命が日向三代目で、日本国の初代天皇のお父さんである。

神社の背後の山の上にはウガヤフキアエズの墓がある。神さまにも墓があるのか疑問もわくが、日向三代は神と人間をつなぐ役割を持った神々なので、墓があってもおかしくない。海から登るとかなりの高低差で、大変きつい。軽い気持ちで登ったが、汗びっしょりになった。
宮内庁は「陵墓参考地」として保護している。しかし私が見たところでは、これは古墳ではなく、ただの山の頂上。しかし神の依り代としては、いい場所だった。

日向二代目は燃え盛る火の中で生まれ、三代目はワニのお腹から生まれる。いずれも尋常なお産ではない。その意味するところは何なのか、私にはよくわからない。でもまあ古事記にはそう書かれているのだからしょうがない。

 

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