■4-4 日向四代目、初代天皇の誕生

  さて四代目の誕生であるが日向三代の神話の続きには詳しく記されていない。鹿児島と宮崎の海側の神社には日向三代のご夫婦が祭られているのだが、第四代をまつる神社はその地域のどこにもない。宮崎神宮には第三代のご夫婦(ウガヤフキアエズ命とタマヨリ姫)とその子である神武天皇が祀られている。しかし宮崎神宮は明治天皇が王政復古を掲げて作ったものだから歴史はない。

実は日向四代目を祭るのは宮崎県高千穂地方の高千穂神社が一番重要である。高千穂には天の安河原や天岩戸神社など高天原の伝承の地もあり、天孫が降臨したという「久士布流多気」もある。私は近くの九重山が「クジフル」にあたるのではないかと思っている。古事記の記述には天孫が降臨したのは高千穂の「クジフル岳」となっている。高千穂地方の神話には日向三代の話は出てこない。天孫の子孫である鵜葺草葺不合命(ウガヤフキアエズノミコト)の子がのちの神武天皇であるとされており、竜宮城のことは除外されている。

四代目の系図はちょっと複雑である。出産の姿を見られた母トヨタマ姫は生まれたばかりの子を山幸彦の宮殿に置いて竜宮城に帰った。しかしトヨタマ姫は残してきた子が心配で、妹のタマヨリ姫(玉依姫)を乳母として地上に送った。乳母のタマヨリ姫の育児のおかげでウガヤフキアエズ命はすくすくと育った。成人した彼は、育ててくれた乳母のタマヨリ姫と結婚する。すなわち母の妹と結婚したのだ。

結婚した二人の間に四人の子どもができた。
長兄はイツセ神、次の兄はイナヒ命、その次がミケヌ命で、一番下が、のちに神武天皇になる若御毛沼命(ワカミケヌノミコト)である。すぐ上の兄の御毛沼命(ミケヌ命)が高千穂神社の主祭神で、地元のために働いた神さまである。
その順番と祀られている神社を示しておこう

◆日向初代 ニニギ命=コノハナサクヤ姫、・・・霧島神宮、鹿児島神社
◆日向二代 山幸彦=トヨタマ姫、・・・青島神社
◆日向三代 ウガヤフキアエズ命=タマヨリ姫・・・鵜戸神社
日向四代目は日向の高千穂神社に祀られている。

日向の三世代からひきつづいて、ワカミケヌが日本の初代天皇、神武天皇になる。
ということは、日本の初代天皇はワニの孫ということになる。
前に因幡の白兎の時に書いたが、ちちろんワニは「和邇」一族の事だろう。

たぶん、海人系の和邇族が話の根底にある。天皇家の祖先は高天原系と大山津見神、綿津見神などの海人系統と混血していったことが伝えられているのだろう。
日本の国を支配するためにはただ天下りではうまくいかない。地の神、海の神と協力して築いていったことを示している。

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