3-1 スサノオが八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治する
高天原で伊邪那岐神から海を支配するようにと言われたスサノオ神は
「母の伊邪那美神のもとに行きたい!」
とわがままを言った。
父伊邪那岐神は、別れた妻伊邪那美を慕うなんて許せないと怒り、スサノオ神を高天原から追放することにした。
しかしスサノオ神は居座って、姉の天照大神と「誓詞(うけひ)」で正邪を決することにした。
天照大神はスサノオの剣を噛み砕いてプッと吹くと三柱の女神が生まれた。
その名は多紀理姫(タギリヒメ)、市寸嶋姫(イチキシマヒメ)(弁財天)、多岐都姫(タギツヒメ)通称宗像(ムナカタ)三女神である。
スサノオ神は天照大神の勾玉を噛み砕いて吹くと五柱の男神が生まれた。
正勝吾勝勝速日天之忍穂耳命(オシホミミ)、天之菩比命(アメノホヒ)、
天津日子根命(アマツヒネコ)、活津日子根命(イクツヒネコ)、熊野久須比命(クマノクスヒ)である。
この神さまの名前をワープロ打つのはちょっと大変。以後は省略してカタカナで示すことにする。正勝吾勝の名前がしめすように、天照大神の方が「うけひ」では勝ったはずなのに、スサノオは自分が清い心を持っているから女神が生まれたといい、自分の正義が証明されたと言って高天原に居座り、天照大神の侍女たちに乱暴狼藉を働いた。
驚き怒った天照大神は岩屋の中に隠れてしまった。
前の章で述べた高天原の大事件、「天岩戸隠れ」である。
天照大神の岩戸隠れが解決した後、大事件を起こした張本人(神)のスサノオは全財産を没収され髭を抜かれ爪をはがされて高天原を追放された。
高天原の極悪神スサノオがたどり着いたのが出雲の簸川(ひかわ)上流だった。豊かな出雲を治めていたのは老夫婦だったが近隣の遠呂智族からたびたび侵略をうけていた。神話では遠呂智族は八岐大蛇(ヤマタノオロチ)という頭と尾が八つに分かれた大蛇と言いうことになっている。
スサノオ神は嘆き悲しむアシナズチ、テナズチという老夫婦の話を聞く。近々娘のイナダ姫が八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の人身御供になるのを嘆いていたのだ。これまで7人の娘がヤマタノオロチに食われてしまい、イナダ姫が最後の娘だと聞いたスサノオはイナダ姫を嫁にすることを条件にして、八岐大蛇と戦うことにした。神さまと言っても、そう簡単には相手を倒すことは難しい。スサノオは策略をめぐらす。
アシナズチ、テナズチに指示し、強い酒を八個の酒樽に入れて門の前に置きヤマタノオロチが現れるのを待った。やってきたヤマタノオロチは八つの頭を酒桶に突っ込んでがぶがぶ飲んだ。完全に酔っ払ったのを見計らってスサノオは十握の剣(とつかのつるぎ)でヤマタノオロチ(大蛇)をバラバラに切り刻んだ。簸川は大蛇の血で真っ赤になった。切り刻んだ大蛇の尾からすばらし太刀が出てきた。
スサノオはこれを「ツムガリの太刀」と名付け、高天原の天照大神に奉納しお詫びした。その剣は高天原で「天の群雲の剣」と名付けられ、その後に大和のヤマトタケルにわたり今度は「草薙の剣」と名づけられた。現在この剣は尾張の熱田神宮に納められている。天皇家の三種の神器の一つだが、なぜ熱田神宮にあるのかよくわからない。一方「十握の剣」は「布都(ふつ)御魂」とよばれ、大和の石上神宮のご祭神になっている。
ヤマタノオロチを退治したスサノオ神はイナダ姫と結婚する。アシナズチ、テナズチの豊かな国の支配を任されたことになった。