前回出雲の象徴的狛犬は「威嚇する狛犬」と書いた。国を奪われたことに「反抗するかのような姿」であると私は考えているが、一方ひたすらあなた様には従いますという感じの狛犬も同じ神社内にいる。このあたりはかなり複雑な感情があったのではないだろうか? 写真は揖屋神社石段上にいたおとなしそうな狛犬である。出雲の狛犬は来待石というやわらかい凝灰岩で作られている。細工は容易なのだが風化が激しいので顔がすり減っているものも多い。 八重垣神社はスサノオ神が八岐大蛇の生贄になりそうだった稲田姫を救い出した場所だ。今は縁結びの神社として有名だ。下の写真のように鏡の池に半紙を浮かべ上にコインを乗せる。速く沈むと早く縁が結ばれるそうなので重いコインを乗せるといいみたい。出雲大社よりもご利益は多いようで観光バスも何台も集まる。八重垣神社で結ばれたスサノオ神は須我神社で新居を持つ。ここで「八雲立つ出雲八重垣妻ごみに八重垣作その八重垣を」という和歌をよむ。これが日本最初の和歌と言われているそうだ。須我神社のかなり奥に立派な磐座(いわくら)がある。ここがスサノオ夫婦の新居の土台であったというが???ところでスサノオ神とオオクニヌシ神との関係は本来はないはずだが、今はスサノオ神の娘をオオクニヌシ神が嫁にして出雲の国を継承したことになっている。 出雲大社の本殿にはオオクニヌシ神が祀られているが、本殿の奥には創立者のスサノオ神が素我社として祀られている。ぬぬーっ!蘇我一族のもとはスサノオ神だったのか?? 素我、須我、蘇我 どれもスサノオ神と関係するのだ。
出雲の恭順型の狛犬はいくつもある。出雲の四大神社の一つ佐太神社の狛犬もその一つ。円座の上に載っているのは須我神社の狛犬と同じである。もう一つ挙げておこう。出雲から少し離れるが美保半島の根元にある美保神社である。国を譲って隠居したオオクニヌシ神に高天原から新しい奥さんの三穂津姫が送られた。ちょっと離れた美保神社から出雲のオオクニヌシ神を見張っていたのだ。ここには威嚇する狛犬ではなく恭順の狛犬がいるのは当然のことだろう。