狛犬行脚‐04 徒然草の獅子狛犬

兼好法師はかなり嫌味!

前回「徒然草」に獅子狛犬のことが書いてあると記した。
京都の聖海上人は大勢の人を連れて丹波の出雲神社にお参りをした。御前の獅子狛犬は後ろ向きで立っているのを見て「なんとすばらしいことか、背を向けているのはほかの神社では見たことがない。なにか深い理由があるのだろう」といって感涙にむせんだ。皆も「都の戻って感動的だった」と土産話にしようと語っていた。ところが宮司が出てきて「また近所のガキどもが獅子狛犬を動かしてしまった」と言って元の向きに戻してしまった。聖海上人の涙はいったい何だったのか。知ったかぶりをするもんじゃないよなあ!と兼好法師は皮肉っている。 丹波亀岡の出雲大神宮の拝殿前に大きな狛犬が居りその脇に「徒然草236段」の看板が立っている。兼好法師の時代、狛犬は「獅子狛犬」と言ったことが、この文章からわかる。しかしこんな大きな狛犬をガキどもが簡単に動かすことができるのかと疑問に思った。この狛犬は江戸型と呼ばれる形でたぶん昭和の時代に奉納されたものだろう。兼好法師の時代の獅子狛犬はもっと小型で子供でも動かせるものだったのだろう。 拝殿に近寄って奥を見るとそこにも狛犬が見えた。平安時代に狛犬が中国からもたらされた時には木造で室内の高貴な方の御簾に置かれたという。今は建物の門番と言う役割だが当初は偉人に近い関係だったようだ。拝殿から詳しく見ることができなかったが、この大きさなら子供でも動かすことができるだろう。

もともとは室内に置かれていた この後訪れた京都の仁和寺で木造狛犬を見ることができた。左側の阿吽の吽の頭の上に角がある。こちらが狛犬で右側の口を開けている阿形が獅子である。高貴なお方の館では、二つを合わせて「獅子狛犬」と呼ぶことが多かったようだ。 京都では獅子狛犬の伝統を引き継いだものがある。先日の祇園祭の際、四条通のデパートに展示されていたものだが、仁和寺のものと同じ様式で角アリの狛犬、阿形の口開けた獅子の組み合わせである。もともとはこのように彩色されていたのだろうが、仁和寺のものはかなり色ははげ落ちている。

仁和寺の巨大な仁王門、仁王様の裏側に獅子狛犬がいる。仁和寺の木造狛犬やデパートの乾漆造は古いスタイルを残す「獅子と狛犬」である。角の有り無し、うず巻き毛と房のような毛、阿吽、それぞれがはっきり違っており、両者は獅子と狛犬という別の聖獣であることがわかる。

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