シリア第二の都市アレッポがアサド政権側の軍隊によって反体制派から奪還された。アレッポは、石鹸や古代遺跡など我が国の観光客にもなじみ深い街だった。私も1978年にダマスカスからバスで訪れたことがある。いい街だったと思っていた。その町はアサド政権に対抗する勢力が抑えていた。西側諸国はアレッポの反アサド派を支援していた。隣国トルコもアサド政権打倒で、欧米と一致していた。
しかしロシアの支援を受けたアサド政権をけっこうしぶとくて、欧米、トルコなどが攻勢を仕掛けてもなかなか倒れなかった。IS(イスラム国)がアサド政権打倒を呼び掛けたことが逆に作用した。さらにイラクではISとクルド民族の戦いも起きている。イラク第二の都市のキルクークはIS支配地区になっていたが、クルド勢力が奪還しそうな気配だ。ISは今度はシリアに攻勢をかけてきている。
クルド勢力の台頭はトルコにとっては大変な脅威だ。反アサド政権どころではなくなった。当初はアサド政権を支持するロシアの戦闘機を打ち落としたりしたが、急いでプーチン政権と和解して、反体制派、クルド勢力の掃討にでた。結果イスタンブール、アンカラで爆弾事件が何件も起きた。
アメリカ、欧米は反体制派を応援していたが、隣国トルコの協力なしには軍事展開はできない。そのトルコがロシア側に寝返ってしまったのだから、もう持つわけはない。アサド政権は高みの見物をしている間に、相手が分裂してしまったので漁夫の利を得た。この後のトルコ政府の、シナリオはクルド勢力とISが戦って両者が弱体したところで、両方をつぶすということだろう。
アメリカはトランプ大統領の出現で、ロシアと仲良くするというから、これでもうアサド政権は息を吹き返す。戦争に正義はないが、このシリアの内戦というのは何だったのか。欧米諸国は中東、アフリカからの難民増加で、大打撃をこうむった。EUで安泰なのはメルケルさんだけかもしれない。
日本はまったく被害なし。・・・と思っていたが、今月15日に行われる安倍、プーチン会談は厳しいものになりそうだ。今回は多少北方4島の返還が期待されたが、プーチンは自信を取り戻し、アメリカも支持してくれるということで、強気になっている。日本にとっては最悪な状況での会談。安倍さんはどう動くのか。安倍さんにとっても日本にとっても正念場だろう。