八甲田山 その7

26日朝7時ちょうどに銅像茶屋(700m)から登り始める。後藤伍長の巨大銅像はこの上の台地にある。冬期は見学に行く人もいないので、茶屋は埋もれている。

昨日午後ちょっとしたアクシデントがあったので、本日の登行は未知のコースをとるのはやめて、銅像コースを登って前岳(1251m)まで行くことにする。「ロープウェーで上がればいいのに!」という願いはリーダの一言で霧散した。本日は土曜日、八甲田スキー場にはロープウェーが一基しかない。土日は大混雑する。総隊長は「6時に登り始めれば9時始発のロープウェーの一番客よりも早く前岳につくことができる!」という。

しかし登り始めは7時になってしまった。500mの高度差だから夏なら9時前につくはず。しかし重たいスキーと重装備の背中のザック、さらに頂上直下の急斜面のため9時半にやっと高度差50mのところに到達。反対側の斜面からはロープウェーの人たちが上がってくる。   人が見えたので「追い越される前にくだるぞ!」との声。人のシュプールをたどるのが嫌な隊長は、「一番じゃなけりゃ」嫌なのだ。まあそれでなきゃノーベル賞候補にはなれないよな。ともかくわがままジイさんにせかされて、まだ誰も滑っていないコースを下る。わずか5キロほどのコースだが、どこで沢を超えるかなど自分で判断しなければならない。    雪山の魅力は自分で、美しいと思うコースを切り開くことができることだ。いわゆるオリジナルってやつだ。新雪がない時期の山は、どこを歩いても道がつけられている。しかし雪がどっさり降ると道はまったく見えなくなる。我ら年寄りでも、しばし一瞬だが、初登頂、初滑降の感激を味わうことができる。    銅像茶屋の前まで降りてきて、今回の山行は終了。茶屋の脇から後藤伍長に対面。下部は雪に埋もれているのにかなり大きい。7mもあるのだそうだ。後藤伍長は立ったまま仮死状態だったが助けられた。しかし両手両足は凍傷で切断された。地元に帰って村会議員になったそうだ。