【🐶全国狛犬100選🦁】030

群馬3 上野一之宮貫前神社 豪華社殿なのに狛犬は・・・

   高崎から出る上毛電鉄に上州一宮駅がある。上野国一之宮の貫前神社への参拝者が使う駅だったが今はほとんどの参拝者は車で来る。その理由は参道口に来ればわかる。遥か上の方に大鳥居があり、急な石段は年寄りにはきつい。

  振り返ればすごい景色だが、最高点に神社はない。なにか愛想の悪い変顔の狛犬が出迎えてくれる。「世の中甘いものじゃありませんよ」という雰囲気だ。
  狛犬の背後にある鳥居の先にはなんと急な下り階段が付いている。鳥居からは拝殿本殿の屋根が見下ろせるのだ。「やっと上がったのに、また下るの?」 
社殿は「下り参道宮」になっており「綾女谷」の谷底にあるのだ。

  谷底に降りると重要文化財の拝殿本殿がある。徳川家光の造営になるものだが、2013年に平成の大修理を終えた。垂木は弁柄朱漆塗、破風建具は黒漆塗り、建物は極彩色され、檜皮屋根はふき替えられ、すばらしい神社に生まれ変わっている。

  ところで狛犬だが下り参道の途中に岡崎型の新しい狛犬が居り、最高点蓬が丘に顔は不気味だがスタイルの良い狛犬が大きな灯篭と並んでいる。昭和2年建立。高い台座の上にいるので仰ぎ見る形になり顔をはよく見えない。

【🐶全国狛犬100選🦁】029

群馬2 群馬総社 灯篭の笠の上に狛犬が・・・

   ここ数年間に探し回った狛犬の中から、私の想い出深い『100狛犬』を選んでFBにアップしている。たまたま群馬総社の拝殿前の狛犬写真を拡大してみたら、なんと灯篭の上に狛犬が載っているのを発見。これは100選に選ばなければと思ったが写真を拡大したらぼやけている。

そこで早速前橋に行き、地元の小林さんに軽トラを出してもらった。今回はお参りではなく拝殿前の狛犬確認だ。確かに高い灯篭の上にちょこんと阿吽の狛犬がいる。私のカメラよりも小林さんのスマホの方がいい写真が撮れた。今回の写真は小林さんから拝借したものだ。


青森編で櫛引神社の灯篭狛犬を紹介した。それは灯篭の火袋から首を出す狛犬だった。対ではないので100選に選ばなかったが、こちらの総社の灯篭狛犬は笠の上の宝珠の代わりに載っておりちゃんと阿吽になっている。これは珍しいので気に入った。 

  ところで群馬総社! 総社という地名は日本国中にたくさんある。旧国の国府があった場所に近いところに置かれた総本山みたいなものだ。武蔵国は府中にある大國魂神社が総社で一宮に匹敵する格式がある。群馬総社のすぐ近くには国府跡、国分寺跡、国分尼寺跡などがある。今は群馬総社と呼ぶが本来は上野国総社なのだ。

【🐶全国狛犬100選🦁】028

群馬1 岩本駅近かに 首を傾げた犬がいた!

JR上越線の岩本駅の近く、線路を渡った高台にこの狛犬がいる。狛犬と書いたが、阿の位置にあるのはただの「犬」の像で口も閉じている。吽にいたってはちょっと首をひねって愛嬌を振りまく「犬」そのもの。「あなたは狛犬なの、それとも犬なの?」と聞いてみたくなった。  地元の石工さんは、狛犬は犬の種類だろうと考えたのかもしれない。たぶん見たことはないが話に聞いていた「狛犬」と言うものを想像して作り上げたのではないか。  

関東の山奥の小さな神社には犬みたいな狛犬がいるが、こんな動きのあるのは珍しい。石工さんの思いはわからないが、狛犬愛好家から見るとよくぞ作ってくれたという名作である。

  岩本神社の目の下は上越線の線路でその先は国道17号線をへて利根川が流れており平地はほとんどない。岩本宿は対岸の高台の上にひろがっている。なので周辺に神社の氏子はほとんどいない。しかし小さな神社なのに本殿の彫刻はすばらしく、木鼻の獏の木像はつい最近取り換えられて手入れもよい。いったい誰がお守りをしているのか?

   明治期には国家が神社を維持していたが、いま小さな神社の維持は誰かの善意でしかない。しかし善意の民もどんどん高齢化が進み、社殿も荒れ果てているところも多い。放っておくと前(023)に古河で見たように「野良犬」になってしまう。なんとか文化財として維持できないものか?

【🐶全国狛犬100選🦁】027

栃木3 太平山1000段階段には狛犬がいた!

   2022年4月栃木の太平山(おおひらさん341m)につつじを見に行った。私は栃木駅からバスで国学院栃木高校前に行き、太平山神社表参道を行くコースを選んだ。ところがその参道「あじさい坂」は1000段階段だと分かった。失敗!と思ったがもう遅い。六角堂の脇からあじさい坂に入った。幸い新しい手すりがついているのでつかまりながら石段をあがった。  

何やら怪しいヘビの洞窟を過ぎ太平山神社の鳥居前に出て一休み。すると巻き毛のカワイイ江戸尾立狛犬が出迎えてくれた。これで気分は爽快!さらに急な石段を上がると丹塗りの仁王門が出てくる。廃仏毀釈の後は隋神門に変わったという相変わらず阿吽の仁王様は門の中にいる。
  その仁王門(隋神門)の裏側に天保13年(1842)生まれの狛犬がいる。阿の狛犬はなんと後ろ脚を跳ね上げて飛んでいる。吽の方は尻尾を高く上げて威嚇型をしている。思いもしない場所でいい狛犬を見つけた。うれしくなってこれまでの疲れはひとッ飛びだ。

  さらに上がって行くと両方の頭に何か載る狛犬が本殿に尻尾を向けた形で、参詣者を警戒している。もとは拝殿と本殿の間に置かれていたがきれいにお化粧をして本殿前に置かれたようだ。阿の頭には宝珠、吽の頭には鋭い角がついている。

  この地は慈覚大師円仁が開いた大寺院があり80余の堂宇があったという。現在もいくつかのお堂が残るがその中に「三輪神社」があった。うれしくなって写真を撮った。あとでよく見たが本殿にどんな神様がいたのか思いだ せない。とうとう狛犬さえ見ればほかのことどうでもよいという「狛犬教」信者になってしまったなぁ!

【🐶全国狛犬100選🦁】026

栃木2 宇都宮二荒山神社の狛犬は変顔!

  宇都宮の二荒山神社には狛犬はいないが、日光の二荒山神社にはすばらしい狛犬がいる。私は狛犬の質と数で神社の格を判断している。同じ二荒山神社なのに「宇都宮は日光に負けているなぁ」という思いをしていた。

  ところが2018年に宇都宮の二荒山神社に行ったら末社の市神社前にいるじゃないか!それも「なんだこれは!」というような”すっとぼけ顔”の狛犬だ。札幌の狛犬愛好家の藤野さんに聞いたら「これが私の一番推しの狛犬だよ~!」との返事が来た。

  他の狛犬愛好家の皆さんも「日本一下手くそな狛犬!」などと冷やかしながらナンバーワン狛犬と持ち上げている。写真を改めてみると、なんか変な顔だがどこか憎めない。だんだんと気分が暖かくなる感じで、私も好きな狛犬のベストテンに入れたくなった。

  ところで日光の二荒山神社は「ふたらさん」で宇都宮は「ふたあらさん」と読む。どちらも下野一宮であると争っていると聞いた。しかしこの狛犬を見たことで宇都宮こそが本家下野一宮だと私は認定した。もう一つ、「いちのみや」が訛った「うつのみや」になったという説も根拠である。日光の二荒山神社さんゴメン!

【🐶全国狛犬100選🦁】025

栃木1 古峰神社 威嚇狛犬、毛並みがいい!

会津に行った時に古峰講の石碑や祠があるのが気になっていた。我が家のそばの神社にも古峰講の祠があるのに最近気が付いた。古峰講とは関東に広く信仰されている古峰神社を崇敬するグループである。

  2018年の正月、「初詣は古峰神社!」との話を聞いて我が家も行ってみた。鳥居の前に立派な狛犬がいる。だれも狛犬のことなど教えてくれなかったので大興奮。最初の鳥居下の狛犬もいいが、奥の鳥居の前の江戸風の狛犬は最高だ。

  阿の方は口を開け吠えているよう、吽の方は顔を地面まで下げ、尻尾はぐるぐる巻きだで相手を威嚇する感じだ。それぞれ足の爪はするどくいかにも強そうだ。顔の巻き毛が豪華なので本物の目がどこにあるかわからないのが玉に瑕だ。

  狛犬ばかり見ていたので初詣で何をお願いしたか不明。会津に嫁に行った酒井フミちゃんが「我が家の周辺の初もうでは古峰さんですよ~」とメールをくれた。会津に古峰講碑が多くあることに合点がいった。

【🐶全国狛犬100選🦁】024   

茨城3 坂東市の香取神社 獅子山だらけ!

香取「神宮」は利根川の千葉県側にある。なぜだかわからないが香取「神社」は利根川の茨城県側の坂東市に数多くある。友人の中村君に車を出してもらい5か所の香取神宮を巡ってきた。まず塚崎香取神社、ここには獅子山があり千尋の谷に突き落とした子獅子を上から見守る親獅子が対になっている。

  獅子山は先日みた古河市の雀神社と同じだ。さらに境町の香取神社にも同じ獅子山があった(上の写真)。茨城県の利根川沿いには獅子山が多いのか?あるいはただの偶然なのかよくわからない。

  ところで獅子山の上にいるのは獅子である。近年は「狛犬」と呼ぶが、もともとは「獅子狛犬」と区別され、口を開けているのが獅子と呼ばれていた。しかし近年は口を開けているのも閉じているのもみな「狛犬」と呼ぶようになっている。

  最初は唐から来た「獅子」高麗からきた「狛犬」で対にして「獅子狛犬」と呼ばれていた。しかし気の短い江戸庶民が「ししこま」ではなくただの狛犬と省略した。獅子は唐獅子とか獅子舞に集約され神社の門番は狛犬と呼ぶようになった。しかし私はせめて獅子山の上にいるのは獅子と呼びたい!

  5か所の香取神社の2社は獅子山があり、2社には獅子的な狛犬がいた。残り1社は新しいもので狛犬も獅子もいなかったが坂東市の狛犬巡りは期待以上だった。しかしいくつか宿題が残った。また行って地元に長く住む吉田さんに話を聞かなければならないなぁ!

ここに地図を入れる。後日

【🐶全国狛犬100選🦁】023

茨城2 雀神社の獅子山の色が付いた狛犬

  古河の街のはずれにある雀神社の獅子山の上に載る彩色の狛犬である。焼き物ではなく石造である。左の狛犬は振り返って参道の方向を見ている。いずれも尻尾を建てた構え型であるが、この形、彩色は珍しい。慶応3年の作である。私はこれまで見たことがない。

  右の写真が神社の正面の入り口だが、まっすぐの先は渡良瀬遊水地の土手である。参道は途中で右手に直角に曲がる。するとその両側に獅子山がありその先に鳥居、拝殿となっている。

  右側の獅子山の途中まで登ってきた子がいるが左側は登るのをあきらめたような子が上にいる親を見上げている。親は参詣者の方を見ているのではなく、子が登ってくるのを促しているのかもしれない。

拝殿前には「はじめ狛犬」がいる。右の狛犬の胸には奉納の時期が書いてある。元禄3年(1701)、石造狛犬としては古いものであるが保存は良い。

  末社の裏手の土手を登るとこんな景色が見える。この広大な草原は渡良瀬川の遊水地に続いている。向こうに見えるのは日光連山、富士山型は男体山だろう。

  景色を眺めて古河の駅に戻る途中、廃墟になりかかっている立派なお屋敷があり、崩れた塀の脇からこんな狛犬が見えた。子取り玉取りの対と阿形のみの狛犬である。大谷石でできているがまだそんなにも風化していない。このまま捨て犬ならぬ「捨て狛犬」になったらかわいそう。何とかしてやりたい狛犬たちだ。

【🐶全国狛犬100選🦁】022

茨城1 大洗磯前神社、3.11では皆が避難してきた。

  この神社はまさに海に向かっている。大鳥居前の石段を上ると社殿がありその前に備前焼の大きな狛犬が来る人を歓迎している。足元には海辺から参拝者が持ってきた石がびっしりおいてある。

  私がこの神社を訪れたのは2011年の初もうでだった。そのすぐ後にあの東日本大震災がおこった。その時高台にあるこの神社の境内には多くの人が避難してきたそうだ。上の右の写真にある鳥居も破損した。

  その時には磯崎港でこんな豪華な食事をした。磯崎港は穏やかでその年の豊漁が約束されているように見えたが、まさかあんな大津波が来るとは夢にも思っていなかった。その後はどうなったのだろうか。小学校以来のともだちの中村輝ちゃんと話をした。

 
「そんなら見てくるよ!」とフットワーク軽くこんな写真を撮ってきてくれた。いまや輝ちゃんは狛犬愛好家の仲間である。

  震災前、狛犬の足元にびっしり敷き詰められていた。右上は末社の鳥居の上に置かれていた。しかし輝ちゃんの写真では全く石は置かれていない。 なにか意味があるのだろうか。この写真以外は2010年1月の初もうでの時のものである。

【🐶全国狛犬100選🦁】021

福島3 いわき 震災で被害を受けた諏訪神社の狛犬

  普通の狛犬は社殿の前でお互いに相対して顔だけ正面を向いている。しかしこの狛犬は二頭とも参道の先の海を見ている。「魔物を入れないぞ!」という強い決意が感じられるような感じだ。この神社にも東北大震災の時に津波が押し寄せた。

  拝殿前の狛犬や台座に乗った狛犬の破損はないが、鳥居は二本とも新しくなっている。すぐ隣の神社の狛犬も新しくなっている。

  いわきの海岸部の神社はことごとく地震と津波の被害にあった。地元の人たちはまず神社仏閣の債権から復興を始めた。周辺はまだ茫漠とした風景だが、神社はきれいになっている。

  2024年の3月に地元天栄村に住む荒木優子さんに案内してもらっていわきの神社を回った。荒木さんは地元新聞に温泉の連載を持っているバイクジャーナリスト、カソリック教徒のひとりである。地図を見ながら、なんでこの辺りには諏訪神社が多いのだろうと話をした。なぜだかわからない。

  この諏訪神社は「両諏訪神社」となっている。両とはなにかも聞く人がいない。全部で3体の狛犬がいた。この狛犬は石段の上にいる。今は目の前にかさ上げされた道路が見えるが、津波の時には押し寄せる波をみていたのだろう。大きく胸を張って大声で避難を呼びかけているような姿に見える

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