有耶無耶の関

鳥海山登山も終わり、象潟をあとにして山形県の鶴岡を目指して国道7号線を走り出した。とすぐに「有耶無耶の関」の信号があった。ここが有名なうやむやの関だと感激したが、自分の車ではないので止めてもらうわけにも行かず通り越した。
 家に帰ってから有耶無耶の関についてちょっとだけ調べた。下の地図のマークの位置が有耶無耶の関とされている場所だ。この次にこのあたりに来た時にはゆっくり「奥の細道」を歩いてみたいものだ。
 有耶無耶の関は蝦夷の侵入を防ぐために9世紀頃に築かれた関。山形県と秋田県の境の三崎峠付近と言われている。宮城県と山形県の県境の笹谷峠が有耶無耶の関という説もあるが、芭蕉様はこの峠を越えて名勝の象潟(きさがた)に向かった。有耶無耶の関は「歌枕」の地なので芭蕉は思い入れがあっただろう。しかし句は残していない。
◎ 有名な和歌
●越もせず 過ごせもやらぬ 三つの森 とやとやとりの うやむやの関
●霧ふかき とやとや鳥の 道とへば 名にさへ迷う 有耶無耶の関 
●たのめこし 人の心は 通ふやと 問いても見ばや うやむやの関
●武士の いづさ入るさに 枝折する とやとやとおりの むやむやの関
◎ 芭蕉:奥の細道
「南に鳥海天をさゝえ、其の陰うつりて江にあり。西はむやむやの関路をかぎり東に堤を築きて秋田に通ふ道遥かに・・・」        
◎ 曽良(芭蕉のお供)
「十六日吹浦ヲ立。番所ヲ過ルト雨降出ル。女鹿。是ヨリ難所、馬足不通。大師崎共、三崎共云。一里半有。小砂川、御領也。新庄預カリ番所也。入ニハ不入形。塩越迄三リ。半途ニ関ト云村有。ウヤムヤノ関成ト云。此間、雨強ク甚濡。」
 この日記にある「女鹿」は男鹿半島に対する名前だが、鉄道ファンに有名な駅らしい。羽越本線にありながら列車がほとんど止まらないのだそうだ。ちょっと行ってみたくなる駅だ!
 もう一つ!
「とやとや鳥」とあるがこの鳥は三本足の鴉(八咫烏)らしい。この地には手長足長という怪物がいて旅人を苦しめた。それを知った鳥海山の神様がこの鳥に命じて、手長足長がいるときには「有耶」と泣き、いない時には「無耶」と泣かせたという。それが有耶無耶の語源なのだそうだ。