82番根香寺(ねごろじ)

81番白峰寺は五色台の白峰にあった。こちら82番は青峰にある。その間は50丁の距離で讃岐の遍路道が結んでいる。旧陸軍の演習地でいまも善通寺部隊の敷地なので開発が進まなかったようで、大変保存がいい。丁石は、たぶん補修したろうが、50丁分全部残っている。50丁はほぼ5.5㎞で、上り下りはそれほどでもない。しかし我々の足では2時間以上かかった。

五色台の主峰、青峯山山中にたたずむ。弘法大師は密教修行の地としこの山に「花蔵院」を建立した。大師の甥の智証大師が訪れ、山の鎮守の一之瀬明神に出会い、「蓮華谷の木で観音像を作りなさい」というお告げをうけた。智証大師は蓮華谷の木で千手観音像を彫造し「千手院」を建てた。この霊木の根は芳香を放ち続けたことから「花蔵院」「千手院」を総称して根香寺とよんだ。根香寺は後白河天皇の帰依も厚く隆盛を極めた。と記されている。弘法大師が開祖だがいまは天台宗。

かなりの山の中で昔は密教の修行の地だった。外界からの影響を断って大勢の修験者が活動をしていた。俗人にはわからないような現象も起こっていたというので、近年はパワースポットとしても知られる。怖いもの見たさに訪れる人も多い。仁王門のわきには牛鬼の大きな像が参拝者を驚かすように立っている。

人間を食べる恐ろしい怪獣、牛鬼が青峰山に棲んでいた。弓名人山田蔵人高清は山へ入ったがなかなか牛鬼が現れない。そこで高清は根香寺の本尊に願をかけた。21日目の満願の暁に、牛鬼が現れ口の中に矢を命中。高清は牛鬼の角を切り寺に奉納。牛鬼の絵は魔よけのお守りとして親しまれている、そうだ。

 

第81番白峰寺

坂出の東には300mを超す溶岩台地が広がっています。溶岩はカンカン石と言われる固い安山岩です。この溶岩は古い時代に噴出したもので、現在知られる火山由来ではない。溶岩は長い間に侵食され、谷がいくつも刻まれ、いくつかのブロックに分かれています。そのなかで目立つ峰に青峰、黄峰、赤峰、白峰、黒峰の五色の名前が付けられています。

白峰に81番白峰寺、青峰に82番根香寺がある。その2寺の間には讃岐遍路道が残っており、重要文化財として保存整備が進んでいる。これはなかなかいい道で、歩いてよかったと思っている。地元の中学生も授業の一環として歩いているようで、今回多くの生徒たちに追い越された。

五色台全体の地図

■815年に弘法大師空海が白峰山頂(337m)に上った。その後空海の妹の子である智証大師がここに寺を創建した。智証大師は、山の神である白峯大権現の神託を受け、霊木で千手観音像を彫造し本尊にしたという。■白峯寺の中には「頓証寺殿」という建物もある。後鳥羽天皇と戦った保元の乱で負けた崇徳上皇は讃岐に流され、都へ戻れないまま流刑地で没した。白峰山に陵墓が造られた。崇徳院と親しかった西行法師が詣で法楽を行った。その後慰霊のため陵墓近くに、崩御までの6年間を過ごした木の丸殿をここに移した。現在の頓証寺殿がそれである。四国88カ所霊場の白峯寺に詣でる人は多いが、実はこの崇徳天皇の御陵に詣でる人も多い。私が訪れた時も、駐車場にいたタクシーの運転手さんは「みなさん御陵にこられています」と教えてくれた。お遍路さんは御陵を素通りして、遍路道に入っていく。お遍路さんは途中にある寺や神社、御陵にはあまり目を向けない。私は歩き旅であるから途中の興味深いところには寄り道をするので予定時間を過ぎることが多い。これもまあいいか! である。

崇徳上皇がなくなってしばらくして西行法師が慰霊の旅をした。五色台の下にある・・神社から急な坂を上ってここまでやってきた。その道を今は「西行道」として参拝の人がとおる。私も知っていれば79番から80番を後回しにしてこの道を上ったのだが・・・、ここから下る気はなく、白峰寺をゆっくり参拝して、讃岐へんろ道を82番根香寺に向かった。

門を入って正面に護摩堂がある。左に曲がって正面に頓証寺殿がある。本堂大師堂は右手にある急な石段を上がった上にある。途中に立派なお堂がある。

本堂の拝殿の天井の釣り灯篭

昨日参った79番天皇寺が崇徳天皇の配流地の御所だった。81番は御陵だ。天皇関連とすれば79番から80番を飛ばして81番へ行くのが自然だ。昔のへんろ道もそうなっていたらしい。しかし札所めぐりは順番どおりに行くようだ。合理的な考えをする人たちは79⇒81⇒82⇒80⇒83 とめぐるようだ。

下弦の月 って久しぶりだね!

 四国お遍路の最中なので、朝は早くから起きて支度しています。空にはこんな月が出ていました。これは「下弦」の月です。「エエーッ 弦は上の方にあるじゃないか。上弦の月だろ!」と言われることがあります。私も長いこと教えていて、大いに疑問を持っていました。月が沈むときに弦が上にあるか下にあるかで決めたようですが、今見えている月が地平線に沈むときには弦が下になるので下弦です。しかし太陽が高くあるので見ることはできません。ということで、下弦になった月を実際に見た人はいないのです。見えることはない「下弦の月」、やっぱりおかしいなあ!