狛犬行脚‐01 出雲の威嚇する狛犬

 黄泉の国の入り口を黄泉比良坂(よもつひらさか)という。島根県松江市の揖屋神社の近くにありパワースポットとして知られている。私が訪れた時女子大生グループと行き交った。嬉しそうにはしゃいでいたがパワーにはマイナスのものがあることを知らないのか?

私はパワーを吸い取られないように密かに訪れて揖屋神社に戻った。神社の入り口には上から見下ろすように狛犬が威嚇していた。普段狛犬を気にすることはないがこの日は狛犬が放つパワーを痛いほど感じた。それがマイナスかプラスかはわからないが黄泉の国パワーなのだろう。

黄泉の国とは死後に行きつく冥土のことで地獄もそこにある。蜘蛛の糸をつたわって脱出しようとしても「黄泉帰る(よみがえる)」ことは難しい。
揖屋神社の狛犬に威嚇された後、出雲の国の神社をいくつか回った。ご本家の出雲大社に狛犬はいなかったが出雲国一宮の熊野神社、縁結びで有名な八重垣神社、出雲総社の六所神社には揖屋神社と同じ姿の狛犬が周囲を威圧していた。

出雲の神社の狛犬に圧倒された後に各地を歩くと狛犬が気になるようになった。私の狛犬遍歴は出雲の狛犬パワーから始まった。もう10年以上続いているのは出雲でもらったのがプラスパワーだったおかげだろう。

出雲型の狛犬は後ろ脚と大きな尻尾を逆立てて身構えている。そばによると今にもとびかかってくる感じがする。各地を歩くとこの形の狛犬は出雲系の神社にはかなり存在する。出雲の狛犬は同じ石工が作ったのかもしれないが、各地のものはこの姿をまねて作ったものだろう。

なぜこのような形になったのかは、太古の時代に出雲国が伊勢のアマテラス神に国を奪われたことに起因するのではないか。出雲国は、皮を剥がれた白兎を優しく治療したオオクニヌシ神がつくった国である。オオクニヌシを慕う民は多くいたが、突然アマテラス神の孫が高天原からやってきて(天孫降臨)国を譲らされたのだ。

敗北したオオクニヌシ神の息子のタケミナカタは日本海を北上し姫川にいた母のヌナカワ姫のもとに逃げた。そのせいなのか出雲の威嚇狛犬は日本海側の神社に多いことが知られている。