読書チャレンジ:5日目「夢二を変えた女(ひと)」

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竹下夢二という画家、私はあまり好きではない。猫を抱いたなよなよとした女性の絵(黒船屋)を見たことがあった。夢二には奥さん子どももいたが、何人もの女性と浮名を流した。黒船屋の女性も夢二の毒牙にかかった女性の一人だと思っていた。しかしこの本を読んでみて、夢二とこの女性との関係は、一方的な受け身の関係ではなく、お互いに自立を目指した関係であったと知った。黒船屋モデルの女性の名は笠井彦乃。この本の著者坂原さんの母の姉、伯母だった。

 坂原さん文を適当に拾ってみる。若いころは彦乃と夢二の関係を不快感をもっており、母が熱心に彦乃を追っている姿に批判的だった。ところが定年退職後母の集めた彦乃日記を読むにつれて、夢二に付き従って病に倒れた薄幸の女性とはかけ離れた彦乃の姿が浮かび上がった。実は画家として自立をめざし、夢二とは対等な愛情をもとめて愛を貫いた意思のある女性だった。

坂原冨美代さんは私が竹早高校で10年間一緒に過ごした同僚で、いつも「もっとシャントするように!」と言われていた。我が家、学校でも叱咤激励されており、心休まる日が少なかった日々だったことを思い出す。
まえがきに近藤富枝さんが坂原さんのことを「彦乃さんに似ている!」と書いている。彦乃さんは夢二の描く弱弱しい美人ではなく明るく行動力のある女性だったようだ。彦乃さんは大正時代の重苦しい世相を突き動かし女性の自立を目指した一人だったようだ。まさに姪っ子は現代の彦乃さんのように見える。現代の自立した女性の典型だが、若いころはダンナとともに登山家でもあった。夫君は高名な登山家。