タシケントがウズベキスタンの首都である。これまで見たイスラム教の観光都市とは全く違って生産、流通、教育などすべてをもつ近代都市である。1966年に大地震があり古い隊商都市の建物がすべて壊れた。ソ連邦の大都市であったためにロシアが威信をかけて復興がなされた。街はロシア風に生まれ変わった。サマルカンドなどで見るイスラム建築はほとんどなく東京タワーよりも高いテレビ塔があり近代的ホテルがたち中央アジアではめずらしく地下鉄が走っている。
中央アジアの乾燥地だがタシュケントは水に恵まれている。それを誇るかのように各地に噴水が作られている。ちょっともったいない気がするが豊かさの象徴なのだろう。
今タシュケントの人口は260万人いるという。昔はロシア人が70%近くいたが、1991年のソ連崩壊以降はロシア人は15%以下になっている。街の看板などの表記はウズベク語(ローマ字表記)、ロシア語(キリル文字)、英語などである。ウズベク語はトルコ語とよく似ており、私も少し理解ができる。真ん中の写真の文字はウズベク語、O’Z はウズベキスタンの「ウ」=「Ö」、 havo yollari はトルコ語では hava yollari(点のないi) で空港のことだ。中山さんはロシア語が通じなかったと言っていたが、2001年当時はソ連から離れたばかりでワザとロシア語を使わなかったのかもしれない。
中山さんはタシュケントでおいしい「ポロウ」を食べたと言っていた。ガイドブックには「プロフ」と書いてある。耳で聞けば中山さんの方が正しいのだろうなぁ。タシケントのプロフレストランには驚いた。五右衛門ぶろで作っている感じ。
日本人墓地
タシケントには日本人墓地がある。第二次大戦の終了間際、突然参戦したソ連は満州にいた何十万の日本軍人を捕虜にして、労働力としてシベリアの各地に送った。もちろん国際法違反である。ほとんどの日本人は食べ物もなく重労働、寒冷気候に耐えられず亡くなった。タシケントには2万数千人の日本人が送られた。彼らはナボイ劇場の建設などに従事させられた。生き残って帰還した人は
「シベリヤ送りになった人に比べればタシケントの人は優しくて助けられた」 という。
人々は優しかったかもしれないがソ連という国は人権に関してはまったく無茶苦茶な国だった。ロシアのプーチン大統領はそのソ連を復活したくてウクライナに侵略している。敵国の人々に対する人権などお構いなしというのは今も同じだ。
いま日本人墓地はウクライナの篤志家の方々によって守られており日本政府も力を入れているのできれいに整備されている。私たちもしっかりと抑留者の思いを受け止めて来た。
2001年にシルクロードを走った中山さんの話ではウズベキスタンでは一番沢山検問を受け不愉快だったという。中には警官だとだましてわいろを要求する輩もいたとか。彼らの顔は日本人によく似ていたと書いている。今回私たちは中山さんのような地元の人たちとの付き合いはできなかったが彼らの暮らしを少しは眺めることができた。20年前とは違ってウズベックの皆さんは穏やかになっていると思った。その背景には恵まれた地下資源を使って近代化を図っている結果ができているからだろう。日本人と似た人も多いがやはり西域という感じはする。
今はタシュケントでも観光客は珍しくないのだろう。我々日本人がウロウロしていても興味深く寄ってくる人は少ない。時々背中に「鬼滅の刃」のイラストを描いたTシャツを見せに来る若者もいたが町中には日本の影、トヨタやホンダの車はほとんどない。お隣の韓国は大韓航空が来ていることもあって日本よりも親しみを持たれているようだ。
日本国とは違って圧倒的に影響力があるのはトルコ国のようだ。空港にはトルコ航空の赤いマークが見える。聞くところによればトルコ語とウズベク語は方言のようなものでお互いにすぐに通じるという。トルコ国はソ連邦を離れた中央アジアの国と縁を深めようと様々な交流をしている。中国の一帯一路のように汎トルコルートを作ろうとしているようだ。
トルコとはよい関係のようだが、中国とはどうなんだろう? ウズベキスタン料理に飽きた私たちは中華料理を食べたいと思ったがタシケントの町中には中国料理店はなかった。そのことはある程度の中国との関係の推測の役に立つかもしれない。
今回のツアーでは仏教伝来のシルクロードに接する機会はなかった。どこかで三蔵法師に会わないかと思っていたが、仏教遺跡があるのは北側のフェルガナ盆地、最南部のアムダリア(川)のほとりのテルメズという町であった。残念ながら私たちの体力ではもうそこへ行くことはできそうもない。寂しいが仕方がない。
しかし文化人類学者の加藤九祚さんは91歳で亡くなるまでテルメズで仏教遺跡の発掘を続けていた。なんだ私たちの年齢の11年も先ではないか。もしかするとテルメズで三蔵法師に会えるかもしれないな。
2023年 ウズベキスタン紀行 終了!